ついに危険水域、安倍首相の3選は消滅?後任は?

2018.05.09

政治

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写真/Getty Images

財務省による決裁文書の改ざんや次官のセクハラ騒動の影響で、安倍政権の屋台骨が揺らいでいる。報道各社の世論調査では、“危険水域”とされる30%を下回る調査も出始めた。9月に控える自民党総裁選で、安倍首相が3選される可能性は消えたのか。それとも首相官邸は衆院解散北朝鮮絡みで支持率を急回復させる秘策を練っているのか。

立て続けに発覚する不祥事で内閣支持率が落ち込み

「いよいよ末期症状か」。自民党関係者が思わずうなったのは、NNN(日本テレビなど)が4月13~15日に行った世論調査で、安倍政権の支持率が26.7%に落ち込んだからだ。一般的に内閣支持率は30%を割ると“危険水域”、20%を割ると“退陣水域”といわれる。ちなみに、同じNNNの調査で、2007年9月の第1次安倍政権崩壊直前の支持率は32.1%で今回より高かった。

NNNの数値は特に顕著だが、他の報道機関の4月の調査でもNHK38%、朝日新聞31%、毎日新聞30%など一様に低い。

支持率の急落に最も影響を与えているのは森友学園への国有地売却をめぐる財務省の対応だ。問題発覚直後から財務省は佐川宣寿前国税庁長官を中心に強気な口調で不正を否定し続けてきた。ところが、今年3月になって国有地の取引に関する決裁文書に改ざんがあったことを公表。改ざんは学園側との事前の価格交渉をうかがわせる内容や安倍首相の妻の昭恵氏や政治家などの名前の削除など300か所以上にのぼった。

政府の不祥事はこれだけではない。加計学園による愛媛県今治市への獣医学部新設計画をめぐり、愛媛県や今治市の職員、学園幹部が柳瀬唯夫首相秘書官(当時)らと面会した記録があることが発覚。柳瀬氏は当初、「記憶の限りでは会ったことはない」と面会を否定していたが、5月に入ってから、学園関係者と首相官邸で面会したことを国会で認める意向を固めている。

また、防衛省はこれまで「存在しない」と繰り返してきた自衛隊イラク派遣部隊の日報が見つかったと発表。陸上自衛隊の活動は「非戦闘地域」に限定されているが、日報には複数の「戦闘」との記述が登場する。文民統制(シビリアンコントロール)の原則が揺るぎかねない事態に、安倍首相も「極めて遺憾」として謝罪した。

極めつきは財務省事務次官によるセクハラ騒動だろう。きっかけは週刊誌が福田淳一次官(当時)による女性記者へのセクハラまがいの音声を公表したこと。福田氏は全面否定し、麻生太郎財務相は“陰謀”もにおわせたが、テレビ朝日が「セクハラ被害を受けたのは当社の女性社員」と名乗り出たことで風向きが逆転。福田氏はテレビ朝日の発表直前に辞任を申し出て、財務省も謝罪した。

「首相に責任がある」が、野党にも期待できない

一見すると政権とは関係のない中央省庁の不祥事や“暴走”のようだが、すべては安倍政権の“一強”体制に原因があるのではないかとみる有権者が増えている。

政権が強いから首相や首相夫人に忖度せざるを得なくなったのだし、強い政権の傘を借りて一部の官僚が暴走しているのではないか、というわけだ。各社の世論調査では森友学園をめぐる一連の問題で「首相に責任がある」との回答が「責任はない」との回答を大きく上回っている。

とはいえ、政権の失態が野党の支持率向上には結びついていない。立憲民主党や希望の党、民進党などは政府の不祥事を受けて国会審議を拒否し、日経新聞の世論調査では、審議拒否について「適切ではない」が64%にのぼり「適切だ」の25%を大きく上回った。

同社の調査によると、野党の支持率は立憲民主党が14%、民進党が1%、希望の党は0%。民進党と希望の党は半数強にあたる62名の議員が合流して「国民民主党」を結成したが、40%程度の支持率を維持する自民党の背中は見えない。

石破・小泉・岸田・野田…次期自民党総裁候補は?

永田町で注目を集めているのは野党の動きではなく、自民党内の「ポスト安倍」の動向だ。次期自民党総裁選に関する日経新聞の世論調査では、政権批判を続ける石破茂元防衛相や小泉進次郎筆頭副幹事長がポスト安倍の有力候補だが、3番手につける岸田文雄政調会長も意欲を隠さない。

ただ、岸田派内では安倍首相と戦う主戦論ではなく、首相の自主的な退陣を待つ禅譲論も根強く、総裁選に向けた対応は定まらない。野田聖子総務相も引き続き意欲をみせるが、推薦人20人の確保にめどが立たない。

安倍首相側には、一定の支持の残るうちに自主的に退陣し、後任に影響力を及ぼすという選択肢もあるだろうが、その場合に心配なのが持論である憲法改正の行方だ。首相の禅譲を待つ岸田氏の派閥は宏池会。自民党内では首相の出身母体である清和会と対照的に、ハト派の政策で知られる。

岸田派が4月に公表した政策骨子は「トップダウンからボトムアップへ」「多様性を尊重する社会へ」などと安倍政権への批判ともとれる、リベラル色の強い文言が並んだ。岸田氏が政権トップの座に就けば、これまで安倍首相が先頭に立って進めてきた憲法改正の流れがリセットされる可能性がある。

永田町内では安倍政権が再び求心力を高めるために衆院解散・総選挙に打って出るとの見方もあるが、前回選挙からは1年にも満たない。世論や選挙費用のかさむ衆院議員の反発は必至で、二階俊博幹事長も「この間、解散したばかりだ。そうたびたび解散というわけにはいかない」と否定してみせた。

首相のライフワークである北朝鮮拉致問題で大きな外交成果を勝ち取り、支持率回復を狙っているのではないかとの見方もあるが、現在、主導権を握っているのは北朝鮮の金正恩委員長とアメリカのトランプ大統領。ここに割って入って外交成果をつかむのは容易ではない。

自民党総裁選まで残り4カ月。安倍首相や後任候補の動きから目が離せない。