少額投資でコツをつかめ 一年で投資玄人計画

投資額を増やすときに気をつけるべきこと 「コア・サテライト戦略」で安定と高リターンをバランス

2018.9.12

経済

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投資額を増やすときに気をつけるべきこと 「コア・サテライト戦略」で安定と高リターンをバランス

少額投資を通して投資に関する知識を学んできた連載も6回目で一区切り。すでに少額投資を実践して多少の時間が経過している人は、投資はそこまでハラハラするものではない反面、投入額が少ないとなかなか目立って増えていかない――と、多かれ少なかれ感じていることではないでしょうか?

 

投資は現在の預貯金では享受できない利回りを期待できるとはいえ、月々数千円ずつの積立では1年間に投入できる資金は数万円程度にとどまり、その投資元本から得られるリターンも小規模となってきます。資金的にまだ余力があるなら月々の投入額を増やすことを検討したいところですが、その際にはいくつかの注意点があります。

それまでの積立額や増額の度合いで考え方は違ってくる

毎月の投入額が数千円程度という人の大半は、いずれか一つの金融商品に的を絞って積立投資を続けてきたのではないでしょうか? ただ、同じく数千円の範囲であっても、月々1000円だった人と月々5000円だった人では、増額に対する考え方が違ってきます。

1000円だった人が3000円に増やす場合、投入額が一気に3倍に拡大するものの、それでも年間の投資元本は3万6000円にすぎません。こうしたケースでは新たに別の金融商品を選ぶのではなく、今まで積み立ててきたものに対して月々の投入額を増やすようにしたほうが効率的です。

なぜなら、他の金融商品を追加すると新たな手数料負担が発生しますし、その程度の投入額では分散投資の効果も限定的だからです。増額しても月々数千円程度の投資にとどまる場合は、まだ手を広げないのが基本でしょう。

分散投資の効果

値動きの特性が異なる複数の金融商品に投資先を分けておけば、いずれかが下落しても別のものの利益がカバーする格好となって、リスクが軽減されるというのが分散投資の効果。ただ、投資元本が小さいと損失や利益の規模もそれに比例するため、目立った効果が見られなくなりがち。

これに対し、5000円から1万円に増やす場合は、拡大率こそ2倍で先程のケースよりも小さいものの、年間の投資元本は12万円に達します。これまで積み立ててきた金融商品とは異なるタイプのものを選ぶことで、相応の分散投資の効果を期待できそうです。

そして何より、新たな金融商品に視界を広げることで投資についてより深い経験を積めるようになります。例えば、月々5000円ずつのペースでタイプの異なる2つの商品を組み合わせ、さらに増額できる金銭的余裕が出てきたら、新たに3つ目を拡充させるといったステップを考えるのもいいでしょう。

増額に伴ってリスクを取りすぎない

ただし、新たな金融商品に投資対象を広げる際には、リスクとリターンのバランスをきちんと把握しておくことが不可欠です。よく調べずに選んでしまうと、それまで単独の金融商品に積み立ててきたケースよりも過度にリスクが高まってしまう恐れが出てきます。

これまで当連載でクローズアップしてきた投資信託(投信)低位株(割安株)外国株FXには、それぞれ固有のリスクがあります。その違いをきちんと理解した上で、2つ目を選ぶ際にはその中でもリスクがさほど高くないものを選ぶのが無難です。

リスクが高いものはそれだけ高いリターンを期待できる反面、損失が発生した場合のダメージも大きくなるからです。いきなりリスクの度合いを高めてしまうと、運用実績の浮き沈みが今までよりも派手になってしまう可能性が考えられます。

また、投信にはさまざまなタイプがあって、個々にリターンとリスクのバランスが異なります。外国株にしても、先進国のものと新興国のものではやはりリスクとバランスの度合いがかなり違います。

まだ投資に慣れていないうちは、投信の中でもそこまでリスクが高くなく、商品性も理解しやすいものから2つ目を選ぶのが賢明でしょう。では、それは具体的にどういったタイプの投信なのか? 次で説明することにしましょう。

2つ目は指数連動型の投信で先進国の株式へ分散投資を

商品性のわかりやすさや組み合わせやすさ、それにリスクが極端に高いわけではないことを踏まえて、2つ目の選択肢として浮上してくるのは“指数連動型”の投信(インデックスファンド)です。日経平均やニューヨークダウなど、特定の指数に連動した実績となるように設計されています。

つまり、その市場の平均値となるリターンを着実に達成できるわけです。しかも、販売手数料がかからなかったり、保有中のコストである信託報酬もかなり低めの設定になっていたりする点も有利です。

もしも、今まで積み立ててきた1つ目の金融商品が日本株に投資する投信だったとしたら、2つ目には他の先進国の株価に連動するインデックスファンドを選ぶといいでしょう。そうすることで、世界の先進国に幅広く分散投資を行えるからです。具体例としては、「MSCIコクサイ」という指数に連動する投信が挙げられます。

MSCIコクサイ

MSCI(モルガンスタンレー・キャピタル・インターナショナル)社が算出している株価指数で、日本を除く先進国の株式市場における全体的な値動きを示す。1986年3月から算出がスタートして30年超の歴史があり、世界中の投資家が注視している。

最初に国内の低位株に投資を始めている人も、やはり2つ目では他の先進国の株価に連動するインデックスファンドを選ぶと、投資先を幅広く分散できます。反対に、1つ目として選んだのが外国株であったり、外国株で運用する投信であったりした場合は、2つ目で国内の株価指数に連動するインデックスファンドを選ぶことでバランスを図ることが可能です。

最初に選んだのがFXだったという人も、やはり2つ目は国内株のインデックスファンドを選んだほうがよさそうです。FXでドル・円のポジションを建てている状態で、さらに2つ目の投資先として米国株を選んでしまうと、為替相場において円高が進んだ局面で双方に為替差損が発生します。

金については3つ目、4つ目の投資先といった位置づけになってくるでしょう。あくまで運用のコア(中核)として考えやすいのは国内株式や投資信託で、その次に日本以外の先進国株式の順番となってきます。

こうしたコアを取り巻くサテライト(衛星)的な存在として、個々の余力や好みに応じて国内の低位株や新興国株式、FX、金などを組み合わせていくというのがキホンです。運用の世界では、これを「コア・サテライト戦略」と呼んでいます。

コア・サテライト戦略

運用資産の過半を占めるコア(中核的な部分)では比較的安定した運用成果を追求し、残るサテライト(衛星のようにコアを取り巻く補完的な部分)ではもっと高いリターンを積極的に狙っていくという戦略。サテライトのほうで損失を被ったとしても、運用資産の一部にとどめられているので、そのダメージは限定的となる。

この連載を通して、少額投資を学ぶとともに、さまざまな金融商品を紹介してきました。各々のリスクとリターンをしっかりと把握した上で、少額から投資することで“投資玄人”への道が見えてくるはずです。1つの金融商品に少額投資をするのも、いくつかに分けて分散投資をするのもよし。投資スタイルの確立は早ければ早いほど、資産形成にも有利になっていきますよ。