憲法改正には支持率安定が必須 安倍政権に起死回生はある…?

2017.9.15

政治

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憲法改正には支持率安定が必須 安倍政権に起死回生はある...?

支持率の低下に歯止めをかけようと、内閣改造に踏み切った安倍政権。その後の低姿勢が功を奏したのか、9月11日のNHK調査では、支持率が不支持率を上回った。そんななかでささやかれる小池新党の国政進出構想を前に、年内の解散説が浮上。安倍首相は、来年9月の自民党総裁選で3選を果たし、さらに任期を延ばすことはできるのか。安倍政権の今後を占う。

支持率回復の一手は脱”お友達”

安倍政権は8月3日、「第3次安倍第3次改造内閣」と自民党の幹部人事を発表した。菅義偉官房長官や麻生太郎財務相、二階俊博幹事長ら政権中枢は留任。岸田文雄外相を政調会長に横滑りさせ、後任に河野太郎氏を充てた。そして総務相には、これまで安倍首相と一定の距離を保ってきた野田聖子氏を起用。

写真/首相官邸ホームページ第3次安倍第3次改造内閣

“お友達内閣”の印象を脱し、低姿勢でスタートした新内閣。これには一定の効果があったようだ。NHKの世論調査によると、9月時点の内閣支持率は8月の調査から5ポイント増の44%。不支持率は7ポイント減の36%だった。集計方法が変わったので単純比較はできないが、支持率の回復は6月以来、3カ月ぶりとなる。

安倍政権をめぐっては森友学園問題加計学園問題、稲田前防衛相の自衛隊日報隠ぺい疑惑などの影響で支持率低下が続いてきたが、ようやく歯止めがかかった格好。ただ、引き続き安倍政権にとっては油断できない状況が続いている。

民進党の自滅と小池新党のプレッシャー

安倍政権の状況を理解するために、政局の動きも見ておきたい。民進党の代表選では、保守派の前原誠司氏がリベラル派の枝野幸男氏を破って代表の座に就いた。しかし、野党第一党とはいえ支持率はたったの6.7%(NHKの9月世論調査)。

しかも、民主党時代から見慣れたメンバーによる選挙だから注目されないのも仕方がない。皮肉なことに、山尾志桜里衆院議員のスキャンダルは多いに注目され、一度内定した幹事長人事の撤回に追い込まれるなど党内では混乱が続いており、有権者の”受け皿”となるには程遠い。

一方で期待が高まっているのが小池百合子都知事を中心とする新党構想だ。民進党中堅のホープである細野豪志元環境相が8月8日に離党届を提出。小池氏の側近である若狭勝衆院議員と会談し、小池新党に加わる意向を示した。すでに民進党を離党した長島昭久氏や旧みんなの党の出身者らが合流する見通しで、5名という政党設立のハードルは越えるのが確実。民進党においては、既に数名が離党する方向で調整しており、今後さらなる離党者が出るかどうかに注目が集まっている。

仮に、早期に新党が設立されれば、次期衆院選では一定の支持を受けるのが確実。今夏の都議選のように自民党も民進党も議席を減らし、既成政党が失った議席を小池新党が奪い去るストーリーも考えられるだろう。

安倍首相は新党の準備が整う前に、支持率が回復した今こそ衆院解散・総選挙に打って出る可能性がある。

解散時期を左右する二つの要素

首相の解散時期に影響を与えるのが憲法改正だ。2016年の参院選で、憲政史上初めて衆参両院ともに改憲勢力が全議席の3分の2議席を上回った。

制度上はいつでも国会が憲法改正を発議できる状態にある。しかし、支持率が安定する前に選挙を行えば、衆院で3分の2議席を割り込む恐れがある。この状況を挽回するために来年、9条の改正に限定しない改憲案を公表し「憲法改正の是非を争点に賛成派を呼び戻し、総選挙を行うのではないか」(自民党関係者)との見方も出ている。

写真/首相官邸ホームページ安倍総理スピーチ

もうひとつ、解散時期に影響するのが自民党の総裁選だ。安倍首相の自民党総裁としての任期は来年9月まで。自民党は今年3月の党大会で党則を改正し、総裁任期を2期6年から3期9年に延長。安倍首相は東京オリンピック後の2021年まで総裁を務めることが可能となった。

ただ、支持率が安定しなければ党内に「新しい顔で選挙すべきだ」との声が高まる可能性は多いにある。すでに”ポスト安倍”の有力候補である石破茂元防衛相は来夏の総裁選をにらみ、首相批判を徐々に高めている。これまでは首相の続投が既定路線だったが、党内では「安倍総理の3選は無くなった」(自民党中堅議員)との声も漏れている。

北朝鮮情勢と新たな一手

波乱要因があるとすれば北朝鮮情勢だろう。安全保障上の有事があると内閣支持率が高まるとの分析もある。

北朝鮮がミサイルの発射や核実験を強行したことでアメリカとの間で緊張感が高まっているが、9月6日には、アメリカが国連安全保障理事会の理事国に、「石油禁輸」など強力な制裁を意味する決議案を提出。しかし、中国とロシアの「北朝鮮市民への影響が大きい」とした反対を受け、石油の輸出に上限を設ける方向へ見なおし、採択された。

制裁決議の熱が冷めやらぬ9月15日、東北東方向に弾道ミサイル1発が発射され、北海道上空を通過、襟裳岬から東へおよそ2200キロメートル先の北太平洋へ落下した。今後、北朝鮮がさらなる挑発行為に出たり、アメリカが軍事行動に出たりすれば安倍政権の支持率は、より上昇する可能性がある。しかし、国外情勢が緊迫すれば解散総選挙などやっている余裕は無くなるので、安倍政権は難しい判断を迫られることになるだろう。

経済政策や外交において一定の成果を上げてきた安倍首相だが、2017年の上半期はまさに急転直下の展開だった。いずれにせよ、総裁3選や憲法改正に向けて準備を進める上では、国民の支持率を安定させることが重要だ。

新たに掲げた国策「人づくり革命」を軌道に乗せ、国民の信頼を獲得できるかどうかなど、疑惑や不信が続いたからこそ、次の一手に関心が集まる。