ボーダーレス化が進む電機業界と自動車業界【CEATEC2023】

2023.11.30

技術・科学

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ボーダーレス化が進む電機業界と自動車業界【CEATEC2023】

「未来を変える、イノベーター10万人のための共創の場へ」をテーマに掲げた「CEATEC2023」(10月17日~20日)を通して感じたのは、電機と自動車との業界の垣根がさらに薄まったということ。課題解決を担うソリューション系の企業が多い印象だった。現地の様子を紹介する。

自動車業界の技術革新で他分野のメーカーも参入に関心

かつて「家電の見本市」と呼ばれていたCEATECは2016年から脱・家電見本市を宣言。現在は“Society5.0”を打ち出し「IoT」(モノのインターネット)と「共創」で、未来の社会や暮らしを描く展示会にシフトしている。

開幕当日のオープニングレセプションでは、岸田文雄首相や河野太郎デジタル大臣、西村康稔経済産業大臣が出席したほか、河野大臣と西村大臣は会場も見学するなど、政府として力が入っていた。最近よく叫ばれている日本の電機産業の衰退、ひいては国力の低下を痛感しており、何とかしたいという思いがあるからだろう。

視察に訪れた河野デジタル大臣。

自動車業界は、電気自動車と自動運転という大きな技術革新が、ほぼ同時にやってきた。内燃エンジンは技術のすり合わせ必要だが、電気自動車は技術がコモディティ化(一般化)するので参入障壁がグッと下がる。また、自動運転はコンピューターが絡むため、電気業界と自動車業界の親和性が非常に高い。だからこそ、近年はアップルなど、自動車業界以外のメーカーが関心を寄せている。CEATECでもその傾向が見られた。

自動車メーカー以外の企業による自動運転のモビリティの例として、京セラコミュニケーションシステムが開発した「公道を走る自動走行ロボット」の一例がある。小さな無人自動車という感じだが、これは用途にあわせて仕様が変えられる汎用性が高いものだ。

北海道石狩市では「自動配送ロボット」として車両にロッカー(3種類の大きさに対応)20個をつけて宅配便を配送する実証実験が行われている。同市内で決められた1周約5キロのルートを時速15キロで走行。注文した商品が自宅付近に来ると、スマホにインストールされたアプリに通知され、ユーザーはそれを取りにいく。

また、千葉県千葉市で行われているのは「移動販売ロボット」だ。温冷蔵機能を備えた車両で、飲み物やちょっとした食べ物を乗せて、公園やマンション群を周回する。無人の移動式コンビニエンスストアだ。客はロボットに搭載されたタッチパネルに表示される商品を選択。スマホを使って電子マネーで決済すると、商品のあるロッカーが解錠され、商品を取り出せるというものだ。

ボーダーレス化が進む電機業界と自動車業界【CEATEC2023】
京セラの子会社が実証実験をしている小型車両

三菱電機の無人自動運転小型バスはすでに商用化へ

三菱電機は、産業技術総合研究所(産総研)などと共同開発をしたレベル4(運転手不在の運行)の自動運転車両を開発。「ZEN drive」と名付けられた小型バスは、2023年5月から福井県永平寺町で、永平寺口駅と永平寺の入口を結ぶ2キロの路線を時速12キロで走行する(大人100円、中学生以下50円)。

2023年10月29日に4人を載せて走行していた際、自転車と接触したため、現在は安全が確認されるまで運行中止となっている。ケガ人はいなかったことは不幸中の幸いだが、これからしっかりと対策を行うことができれば、より安全な運行につながるだろう。

京セラや三菱電機、いずれの取り組みも成功すれば、人口減少による人手不足や過疎地域の買い物難民の手助けになることは明らかだ。

実際に永平寺で商用運行している小型のバスのようなモビリティ。

自動車を部品供給で支えているのは日本を代表する電機メーカー

電機メーカー・パナソニックが自動車製造に提供するパーツは多い。小さなチップ、ファン、車載電池、モーター、レーダーなど、さまざまな車載デバイスやモジュールがあり、環境課題の解決や快適な車室の実現に貢献している。家電のイメージから完成品を売る会社というイメージが強いが、自動車においてはほぼ黒子の役割だ。

担当者は「現時点では内燃機関(ICE)と電気自動車の両方に合わせた部品を提供しています。特に軽量化、小型化が大事です。なぜなら燃費、電費に大きくかかわるからです。現時点では両方に部品を供給するスタンスです」と語る。BEV(バッテリ式電気自動車)の存在感が上がっているが、まだまだ市場が大きいICEを含めた二刀流でビジネスを展開する。

パナソニックグループが取り扱う約60のデバイスやモジュールが組み込まれた自動車の展示物。

暮らしを変える技術

「未来の暮らし」という意味では、面白い技術もあった。鹿児島にあるインターマン社は、画像が空中に浮かんだように見える「空中コンピューター」を開発。見た目は3Dのホログラムのような感じだが、大きな違いは、飛び出した画像に対して手を動かすことで360度自由に回転でき、好きな視点から見ることができる点だ。つまり、CADのように画面の中で立体を動かすのではなく、実際に完成したイメージが体感できる。これはドローンなどで撮影した画像データがあれば再現できるといい、例えば、城の外観を撮影すれば、イメージを作成でき、天守閣含め、城の構造が深く理解できるという。

据え置き型の「SOVL-S60」(イメージ)。独自の空中コンピューティングの世界が展開される。

そして、CEATEC AWARDの「デジタル大臣賞」を受賞したのが、大阪のザクティ社が開発したウェアラブルデバイスの「Xacti LIVE」という商品だ。眼鏡に取り付けられるほど小さい小型カメラ。高画質、水平維持、ブレ補正に優れているので、例えば建設現場などで使うと、一つひとつの構造物や部品、建て付け具合などを遠くにいる人がライブ映像で確認でき支援を容易にすることができる。ほかにも外科医が装着すれば、医師の目線で手術の様子を見ることも可能だ。

ほかにも、東芝はウォークスルー型危険物検知装置を用いた「空間セキュリティマネジメントソリューション」を紹介。例えば、空港の税関で危険物を持っているかどうか調べるためには、ゲートをくぐるなど、数秒止まる必要がある。しかし、東芝が開発した装置は、強い直進性があり、大きな情報量を伝送できるミリ波を活用したもので、電車の改札のように止まらずに検知ができる。小売店、ホテル、公共施設の入口に設置するのを想定しているという。

これをイベント会場で活用すれば、手荷物検査がほぼなくなる。電車車両内に組み入れれば、危険物を持っている人がわかるため、運転手、車掌が対応することも可能だ。2021年に発生した京王線での死傷事件のような凶悪事件も防ぎやすくなるだろう。いずれも製品も、発展すれば確実に私たちの生活に役立つ商品のはずだ。

4日間の登録来場者数は、前年の8万1612人から8万9047人に増加したが、過去2番目の少なさ。「ジャパンモビリティショー」の内容とも近く、モビリティと電子機器は限りなく垣根がなくなりつつある。