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政治

北朝鮮[金正恩]とアメリカ[トランプ]の対話を仲介するのは誰?

2017年05月15日
読了時間: 06分00秒

写真/ホワイトハウス、ロシア大統領府

【対話】向かい合って話し合うこと。また、その話。(デジタル大辞泉)

挑発を繰り返す北朝鮮・金正恩氏の目的は、アメリカから自国を守る譲歩を引き出すことだ。それには国と国とが接触する外交としての"対話"が不可欠。しかし、2国間には核兵器やミサイル問題が横たわる。誰かが仲介しなければ実現は難しい。

身内を殺す国家元首と対話などできるのか

2013年、金正恩(キム・ジョンウン)氏の叔父で後見人の張成沢(チャン・ソンテク)元国防委員長が、反革命の罪で公開処刑された一件には、「親族も信じられないほど危機的状況なのか」と世界も驚愕した。

しかし、日本の戦国時代などはむしろ地縁・血縁の殺し合いであり、名だたる武将すべてが狂人だったわけではない。ある意味、肉親だからこそ裏切られた際の憎悪は他人以上に大きい、ともいえるだろう。

歴史をひも解けば、国民を大虐殺した独裁者は数多い。例えば旧ソ連のスターリン首相は50万~700万人を粛清したといわれ、悪名高きドイツのヒトラー総統は約600万人ものユダヤ人を殺害、カンボジアのポルポト政権も約200万人を死に追いやっている。

翻って"金王朝"だが、建国直後の混乱期にかなり大規模な粛清の嵐が吹いたものの、今の正恩体制が、あからさま、かつ計画的に国民を大量虐殺しているという事実はない(もっとも国民を餓死に追いやった罪は別だが)。これを考えれば、前述した指導者たちよりも、ある意味"まとも"と言えなくもない。

正恩氏にとって、最大の目標は「"金王朝"安泰の確実な保証」であり、核兵器開発はこれを達成するためのツールに過ぎない。このことは彼も先般ご承知のはずで、換言するなら米トランプ大統領が、この"保証"を確約さえすればいいわけだ。

ということで、十分対話は可能だろう。正恩氏が対話も不可能な輩なら、とっくに核ミサイルのボタンを押しているはずだし。

金正恩

最大の同盟国・中国は意外と動けない

では、米朝が対話するためのキー国はどこか。

まずは中国が挙げられる。何だかんだ言っても北朝鮮にとって唯一の"後ろ盾"であり、最大の同盟国だからだ。しかし、最近は北朝鮮よりも経済的に豊かな韓国との関係を重視し、そのため金正恩氏は中国の言うことを聞こうとはしない。

また中国側も国際世論を気にしてか、北朝鮮との距離を徐々に置き始めている。"北"にとって主要な外貨獲得源である石炭の輸入をストップし、さらに中国から"北"への石油供給の停止も示唆し始めた。

4月28日には「再び核実験を行えば独自制裁を科す」とまで表明。独自制裁とは、おそらくはこの「石油供給停止」を指すのだろう。

こうした動きに対し北朝鮮は、ついに5月3日、国営の朝鮮中央通信を通じて、「中国は無謀な妄動がもたらす重大な結果について熟考すべき」と、名指しで批判。これは極めて異例どころか、おそらく前代未聞ではないだろうか。

ただ、こうした制裁が可能な中国は、裏を返せば金正恩体制と直接パイプを持ち、経済的にも決定的な圧力を加えられる世界唯一の国、ということでもある。このため、同国があらゆるチャンネルを動員して米朝両国の橋渡しに尽力するのは確かだ。

軍事衝突ともなれば、その火の子をまともに被るのは他ならぬ中国であり、数百万人とも予想される"北"の難民が旧満州地方に押し寄せる。

そればかりでなく、もし"金王朝"が崩壊し、米韓連合軍が北朝鮮を占領するような事態になれば、中国は今後彼らと直接対峙しなければならなくなる。そのための軍事的支出もバカにならず、それ以前に安全保障上も極めて問題だ。

習近平

ところが、中国の習近平政権は、外交的に大きく動けない状況にある。というのも、5年に一度開催される共産党の最大イベント「第19回党大会」を今年の秋に控えているからだ。

習主席は現在、江沢民元国家主席が首領となる「共産主義青年団派」(太子党=党幹部の子弟グループ)との間で激烈な権力闘争を演じており、党大会は最高指導部(政治局常務委員)の人事が刷新される場でもある。

3期目を目論む習主席としては、公約の「GDP成長6.5%必達」は最低死守ライン。万が一、米朝軍事衝突となれば、株価や為替相場が乱高下し、ただでさえ減速気味の経済にさらなる大きなダメージを与えかねない。

目下、習主席は反対派閥の封じ込めに成功している模様だが、こうなれは江沢民派に巻き返しのための格好の材料を与える結果となり、ヘタをすれば習氏は主席の座から引きずり降ろされる可能性すら否定できない。

"米朝交渉の仲介"はある意味劇薬だ。仮に交渉が決裂すれば、中国がかぶる損失は計り知れない。

かつての盟友・ロシアにとっては「干天の慈雨」?

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