日本は民主主義国。ゴーン氏は直ちに保釈されるべき

2019.1.16

社会

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日本は民主主義国。ゴーン氏は直ちに保釈されるべき

東京拘置所 写真/Bloomberg

日産元会長カルロス・ゴーン容疑者の勾留は、昨年11月の逮捕から約2カ月に及んでいる。起訴後も保釈請求は却下され、公判まで長期にわたって勾留される可能性から、海外メディアからは批判が相次いだ。2002年の鈴木宗男事件に関連して513日間勾留された経験がある佐藤優氏は、長期勾留の不快さ、屈辱感を語る。図らずも日本の司法制度の在り方に疑問を呈することになった本件について佐藤氏に聞いた。

自白しない限り、長期間勾留するのが日本の文化

1月15日、東京地方裁判所は、東京拘置所に勾留されている日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(64歳)に関して、ゴーン氏側の保釈請求を却下する決定をした。本件について、翌16日の「日本経済新聞」(電子版)は、こう報じた。

勾留は2018年11月19日の最初の逮捕から2カ月近くに及んでおり、さらに長期化する見通しとなった。海外メディアなどの批判の声が高まる可能性もある。

 

弁護人はゴーン元会長の公判が始まるまで少なくとも半年程度かかるとみており、準抗告が退けられても保釈請求を続けるとみられる。公判前整理手続きで争点や証拠が絞り込まれた段階、初公判で罪状認否が終わった段階で、裁判所が「証拠隠滅などの恐れが低下」と判断すれば保釈が認められる可能性はある。

 

東京地検特捜部は11日、ゴーン元会長を会社法違反(特別背任)と金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で追起訴。弁護人は即日、保釈を請求した。

 

ゴーン元会長はいずれの起訴内容も否認し、8日の勾留理由開示手続きでも「私は無実です」と意見陳述。従来、特捜部の事件で起訴内容を否認する被告については早期の保釈が認められないケースが多い。

 

地裁は18年12月、ゴーン元会長と共に金商法違反罪に問われた元代表取締役、グレッグ・ケリー被告(62)の保釈を認めた。ゴーン元会長については、特別背任罪にも問われた点、日産内外で大きな影響力を持っている点などを重視し、証拠隠滅の恐れが強いと判断したとみられる。

 

特別背任罪の起訴内容は▽08年10月、私的な通貨取引のスワップ契約を日産に移転し、評価損約18億5000万円の負担義務を負わせた▽09~12年、サウジアラビアの知人側に日産子会社から約12億8千万円を支出させた――の2つの行為で日産に損害を与えたとされる。金商法違反罪の起訴内容は、18年3月期までの8年間、退任後に受け取る予定の報酬計約91億円を有価証券報告書に記載しなかったとされる。

<1月16日 日本経済新聞>

東京地検特捜部の捜査は、被疑者・被告人が自白しない限り、長期間勾留するというのが日本の文化だ。自白とは、調書(検察官面前調書)に検察官が書いた文書に、被疑者が指印、署名することだ。

逮捕され、拘置所に勾留されると印鑑を拘置所当局に預かられ、使用することができないので、左手の人さし指に黒い朱肉をつけて指印を押す。これに対して検察官は実印のような立派な印鑑を押す。逮捕、勾留された者にしか皮膚感覚でわからない屈辱的瞬間である。

筆者は、北方領土絡みの鈴木宗男事件に連座し、2002年5月14日に東京地検特捜部によって逮捕された。否認したので、勾留は512泊513日に及んだ。公の理由は、罪証隠滅と逃亡の恐れがあるということだが、実際には“お上に逆らう者に対するお仕置き”という要素がある。

東京拘置所から裁判所に行くときはかなり不快な思いをする

このような日本司法の現状に対して、ゴーン氏は、勇気を出して異議申し立てを行った。1月8日、東京地方裁判所で、日産前会長カルロス・ゴーン氏の要請に基づき、同氏の勾留理由の開示手続きが行われた。

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無実だとは思わないが、保釈を認め後は法廷で決着を付けるべき

僕も同様に思う。疑わしきは罰せず、というように、完全に有罪と断定できなければ、有罪にしてはならない、ということだ。冤罪の可能性も捨てきれないのだから。

昨今も冤罪での国家賠償が認められずに納得のいかない判決もあったが、そのような事態は絶対に避けるべきだ。容疑者はあくまで容疑者(犯罪者ではない)なのだから、取り調べが終われば速やかに拘束を解かなければならないし、日本の場合は弁護士の同席も認められないのだから、人道的にも長期拘束はおかしい。

だからと言って、僕はゴーン氏が無実だとは思っていない。報道の通りならば、日産に損失を付け替えた時点で特別背任だ。100%オーナーでもない代表取締役がやる所業とは思えない。検察もゴーン氏もあとは法廷で決着を付ければ宜しい。