この時期になると思う、「いつも通りだな」と。元号が「平成」から「令和」になり、災害が大型化し、消費税が増税されるなど時代の変化は感じるが、相変わらず政治は自民党が強く、野党は外野で騒がしい。安倍晋三首相の在職期間歴代1位というのは、変化がないことの象徴だ。経済的にも米中の貿易摩擦や中国経済の低迷が多少不安を煽るものの、安定しているといっていい。政局を揺るがすような出来事でもあればなどと思うのは歳をとった証拠か。
それでも振り返ってみると2019年も印象に残っている出来事は多い。最近の出来事ということもあるが、特にペシャワール会の中村哲医師が銃撃されたことにはいまだに胸が痛い。私見ではあるが、2019年を振り返ってみたいと思う。
2019年の主な出来事
2月 沖縄県民投票「反対」が72.2%
3月 米大リーグ、マリナーズのイチロー選手が現役引退
4月 統一地方選:大阪ダブル選、保守分裂
4月 ステルス戦闘機F-35Aが青森県八戸沖に墜落
4月 仏ノートルダム大聖堂で火災
5月 元号が「平成」から「令和」に
6月 丸山穂高衆議院議員が「戦争」発言で 糾弾決議
6月 老後2000万円不足問題
6月~ 香港「逃亡犯条例」改正案のデモが本格化
6月 吉本興業闇営業問題
6月 G20首脳会議@大阪
6月 ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険の不適切販売が発覚
7月 参院選でNHKから国民を守る党 が1議席獲得、れいわ新選組から重度障がい者の舩後靖彦議員、木村英子議員が誕生
7月 京都アニメーション放火事件
8月 韓国がGSOMIA破棄 ※11月に破棄撤回
9・10月 台風15号・19号で甚大な被害
9~11月 ラグビーW杯で日本代表大活躍 ※「ONE TEAM」が流行語大賞(12月)
10月 沖縄・首里城で火災
11月 文部科学省が英語民間試験導入の先送りを決定
11月~ 「桜を見る会」で国会紛糾
11月 安倍首相が在職期間歴代1位に
11月 ヤフーとLINEが経営統合発表
11月 ローマ法王が38年ぶり来日
12月 ペシャワール会の中村哲医師アフガンで殺害
12月12日 イギリス総選挙で保守党が勝利
12月18日 トランプ米大統領の弾劾訴追決議可決
◇閣僚辞任:4月 桜田義孝五輪相、10月 菅原一秀経産相/河井克行法相
2020年に予定される主な出来事
1月 イギリスがEUから離脱(ブレグジット)
4月19日 立皇嗣の礼
6月 『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』公開
7月24日~9月6日 東京2020オリンピック・パラリンピック
7月5日 東京都知事選
8月15日 戦後75年
11月3日 アメリカ大統領選挙
12月 プレイステーション 5発売(予定)
「例年」という言葉が通用しなくなった気候変動
気候の変動で自然災害が巨大化していて、「例年」という言葉が通用しなくなってきている。今年は台風15号(9月)、19号(10月)が上陸し、東日本を中心とした各地に甚大な被害を与えた。強風で房総半島などの電柱をなぎ倒した15号、豪雨で関東甲信越から東北にかけて河川の堤防を決壊させた19号、どちらも10年に一度といわれるような規模の災害だ。
異常気象・気候の変動は激しいようで、10年に一度の自然災害が毎年起きてもおかしくない状態なのかもしれない。三井住友海上火災保険の柄澤(康喜)会長が、15号が来たときに「もう一発来たら厳しい」とおっしゃっていたが、そのあとすぐに19号が上陸。保険料も値上げする事態になっている。今後は保険会社だけでなく、個人の保険に対する考え方も変わっていくだろうと思う。
日本代表ベスト8初進出!ラグビーワールドカップ2019日本大会
2019年の最も大きな出来事といえば、個人的にはラグビーワールドカップ2019日本大会(9~11月)を挙げたい。暗いニュースが多いなか、明るい話題で日本を元気づけてくれた。台風による被害で日本全体が意気消沈しかけていた10月半ば、カナダ代表の選手が岩手県釜石市でボランティアをするなど、試合を離れたところでも話題になった。微笑ましいニュースがあると心が和むよね。
ラグビーW杯は「日本では成功しない」と言われていたのが、蓋を開けてみたら過去最高の売上げを記録。日本代表もベスト8に進出するなど、ラグビーをこよなく愛する人間からするとうれしいことがたくさんあった。
前回のイングランド大会も日本代表は強くて、グループリーグを3勝1敗で終え、初めてのベスト8に手が届きかけていた。「スポーツ史上最大の番狂わせ」と称されるほどの衝撃を与えた、強豪南アフリカ相手の勝利。それでもベスト8に進めなかった悔しさが、今回のベスト8初進出をドラマチックにしたと思う。1次リーグ4戦全勝、しかも優勝候補の一角アイルランドにまで勝ってベスト8。ようやくラグビー先進国に追いつけた。
今回は自国開催だからオンタイムで、土日の一番良い時間帯に放送された。だから日本のみんなが見てくれた。日テレもルールを説明するなど初心者でもわかる実況・解説を心掛けていたしね。
“にわか”が増えたといわれていたけど、みんな最初は初心者なんだから、それでいい。今回のワールドカップでラグビーに興味を持って、今後も競技場に足を運んでくれるファンが増えれば、日本のラグビーはステージが上がるだろう。ぜひとも次回以降につながるようにしてほしい。
習近平には頭の痛い問題? “終わりのかたち”が見えない「香港デモ」
国際政治でいえば、6月から大規模化した香港のデモが印象に残っている。半年たった今も続いているが、これだけ長い間、デモを継続できる香港市民のエネルギーに脱帽する。
中国はチベットやウイグルなど国内に自治問題をたくさん抱えているから、一党独裁の支配体制を維持するためにも、今回の香港の問題にはナーバスになっている。早急に解決したいだろうが、天安門事件 のこともあって、武力鎮圧の強硬策にも踏み切れない。今の時代はSNSで情報が拡散するから、天安門のような武力による解決を選択すると、今の体制が一気に崩壊しかねない。党もさすがにそれはわかっているだろう。
デモ隊には頑張ってほしいけど、“終わりのかたち”が見えない。デモ隊もどこまで勝ち取ればデモを終えるのか、わからなくなっているように見受けられる。明確なリーダーが存在しないと言われているから、判断する人が不在なのかもしれない。
香港行政側も誤算がたくさんあったと思う。「逃亡犯条例」改正案を撤回(10月)したらデモは収束に向かうと考えただろうし、香港区議選(11月)では改選前に7割を占めていた親中派が惨敗するとは思ってもみなかっただろう(民主派が議席の8割以上を獲得)。
5つの要求 を認めないとデモは止めないと言っているが、「逃亡犯条例」改正案を撤回して以降、香港行政府はそれ以外の政治的要求を認めないことを表明している。要求を飲むのが一番いいストーリーだけど、先に言ったとおり、中国のほかの地域に飛び火させないために、中国政府も簡単には要求を飲めない。
さらなる長期戦になったとき、このままデモ隊はデモを続けられるんだろうか? 経済的な負担もあるだろうし、行政側はデモを長期化させて自然に沈静化するのを待つと思う。
1999年の香港返還以来続いてきた「1国2制度」もメリット・デメリットがあり、今回のデモは中国にとってデメリットが噴出した状況。でも、香港があったからこそ今の中国の経済発展があるわけだし、50年後に歴史を振り返ったとき、「香港のデモが引き金になって中国が民主化した」とならないとも限らないよね。可能性はとても低いけど、そうなったらベルリンの壁崩壊のように歴史の大きな転換点になる(?)かもしれない。
在職年数歴代1位のおごり? 意味不明の「桜を見る会」問題
「桜を見る会」は、なぜこんなに紛糾しているんだろう? これまで首相が主催する花見ぐらいにしか感じていなかった。僕のところに届く招待状も内閣府が人選しているのを、今回の騒ぎで初めて知った。何度か参加したことあるけど、特にこれといって利権の香りがするような集まりでもない。悪いことをしているわけではないのだから堂々としていればいいものを、名簿を破棄したとか、問題視された後の行動がまずい。
来場者のデータが無い、その日に消去したとか言っているけど、そんなわけないだろう。例え破棄したとしても復元できないことはない。万が一、復元できないことが本当だとしても、周りからしたら誤魔化しているようにしか映らない。吉田茂首相の頃から開催されている伝統のある会なのに、姑息な対応を取るから、森友学園問題・加計学園問題や財務省決裁文書改ざん問題につなげられる。傲慢だとか緊張感に欠けるとか言われるのは、長期政権からくる“おごり”にほかならない。
問題が起こると証拠隠滅しようとするのは、政治家の習性だ。臭い物には蓋をしろ!ということわざは、政治家のためにあるようなもの。証拠隠滅がバレて大事になるのがわかっているのに、政治家は本当に学習しないよな。企業のリスクマネジメントが、ディスクロージャー(情報開示)を基本にしているのとは大違いだ。
安倍晋三首相も11月で在職年数歴代1位になった。国民も自民党の内部でも「安倍さんはもういい」という声が出始めている。次(4選)はさすがにないだろうと僕も読んでいる。良いか悪いかは別の問題だが、後継首相は外務大臣を経験している岸田文雄政調会長かな。国際政治が緊迫化するなか、次の首相には外交経験が問われると思う。残念ながら、ほかには見当たらない。
れいわ新選組の山本太郎代表がかつての日本新党の細川護熙氏のようになると、政局も面白くなるのに。山本氏の政治的ポリシーにはなんら共感しないけれども、パフォーマンスや信念の貫き方を見ていると、すごいやつだなと感心させられるときがある。やり方一つで政界のキャスティングボードを握ることもできるかもしれない。今後、小沢一郎氏と組むとか意味のわからないことはしないで、フレッシュな人選で勝負してほしい。
次の狙いは「メルカリ」か? ヤフーとLINEの経営統合
ヤフーとLINEの経営統合も大きなニュースだった。実質的にはソフトバンクグループの話だ。日本国内の市場では独占禁止法に抵触するかもしれない大きなシェアを占めるが、世界的に見たら小さな規模。公正取引員会が審査に入ると言っているけれども、かつて新日本製鉄と住友金属工業が合併し日本製鉄が誕生したときほどのインパクトはないと思う。あの時は、粗鋼生産量で世界第3位の規模の会社ができたわけだからね。
LINEの親会社である韓国のネイバーからすればLINEは売り時だったと思う。日本でこそ圧倒的なシェアを誇っているが海外では苦戦している。Amazonのように莫大な資金を使って先行投資できるような体力もなく、赤字経営が続いているLINEをグループ内に維持するのはもう無理だろう。
ソフトバンクはAmazonに対抗するプラットフォームを作ろうとしている。衣料品通販のZOZOも飲み込んで(9月発表)、どんどん増殖している。人伝に聞いた話だけど、元ZOZOの前澤友作氏は、経営者として自分ができる限界を感じたということでソフトバンクに売却したと言っているようだ。次にソフトバンクグループが狙うのはメルカリだな。
まったく理解できない中村哲医師殺害事件
ペシャワール会の中村哲医師殺害事件は、何とも痛ましい事件。彼の活動に心打たれ何年も前から寄付をしていたこともあり、今年一番ショックだった。
報道を見ていると流れ弾に当たったわけではなく、中村医師を狙った犯行のようだ。なぜこんな立派な人物の命を奪う必要があるのか。アフガニスタンのために尽力し奔走していた人が、アフガニスタンで銃撃され殺されるのは、何度、どんなふうに考えてもまったく理解できない。すべてにおいてマイナスしかない。
良い悪いは別にして、誘拐して身代金を要求されたというのなら、まだ理解できる。2008年にペシャワール会のスタッフが誘拐されて殺された事件にも憤りを感じたが、今回の事件はそれをはるかに上回って、精神に変調をきたしている人間がやったとしか思えない。
中村哲医師にはノーベル平和賞を追贈してほしい。
2020年はアメリカ大統領選挙と東京オリンピック・パラリンピック
2020年はアメリカ大統領選がある。アメリカは一年通してずっとお祭り騒ぎだ。すでに大統領の座を狙う人々は動き始めているし、世界経済に大きな影響を与える選挙だけに世界中が注目している。ちなみに、民主党が勝利するとマーケットは下落するといわれている。緊縮財政などウォール街に取ってネガティブな政策を掲げているから。
「ウクライナ疑惑」で12月18日に弾劾訴追が可決された共和党のトランプ大統領は、アンドリュー・ジョンソン大統領(在職:1865~69年)、ビル・クリントン大統領(在職:1993~2001年)に次ぐアメリカ史上3人目の弾劾訴追された大統領になった。1月から始まる弾劾裁判は上院で無罪になる見通しだが、トランプ大統領が少し重めの足かせを負ったことは確かだろう。
あとは東京オリンピック(2020年7月24日~8月9日)と東京パラリンピック(2020年8月25日~9月6日)が楽しみ。連日何かしらの競技をやっているわけでしょう。他国での開催と違って時差もないし、眠い目をこすりながら観戦することもなさそうだ。
すずき(政経電論編集)
今年は7月の参院選が印象深い。れいわ新選組の躍進(代表は落選しても躍進と呼びたい)と、悪名が無名にまさることが証明されてしまったこと。国が良くなるには国民が、政党の良し悪しを判断するのではなく、政治自体に関心を持つことが大事だと思う。
2019.12.23 16:24