編集長ブログ

3年2か月ぶりに安田純平さん解放

2018.10.24

社会

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シリアの反政府組織に拘束されていたとみられる、フリージャーナリストの安田純平氏が、3年2か月ぶりに解放された。

まず、命が助かったのは喜ばしい限りだ。家族の方々を始め、関係者は一安心というところだろう。

ネット上では、「自己責任」という言葉が氾濫し、安田氏への非難の数が多いように思う。元々、ツイッター等で彼は日本政府を執拗に批判していたから、尚更だろう。気持ちはわからなくもない。こういう時には政府しか頼れないからだ。

紛争地域などの渡航においては、外務省から注意喚起が行われる。渡航の自由は認められているので、行くのは自己責任でいくべきだ。何があっても、そのことで誰かを責めるのは筋違い。ここまでは当然の話。危険を承知で行くのだから。

紛争地域の悲惨な内情を伝えてくれるジャーナリストの存在があってこそ、人々が認識をして、より良い方向へと導く世論が喚起されるようになるのもまた事実だ。

ただ、自己責任だからといって、政府が見捨てるということがあってはならない。国家というものは、国民の生命と財産を守ることが絶対条件だからだ。それを怠っては国の根幹が成り立たない。とは言え、どんな手段を取っても、ということではない。

身代金の話が出てくるが、現在の国際世論は、テロリストの要求を飲むことは許されないのが大勢だ。僕もそう思う。一旦彼らに譲歩してしまえば、同じようなことが繰り返される。外交ルートを通じて、粘り強い交渉以外に救う道はない。カタールが身代金を肩代わりしたという報道もあるが、それには疑問符が付く。報道でしか知り得ないが、僕個人としてはそんなことはないのではないかと思っている。

3年前にISILに拘束された後藤健二さんは、残念ながら殺害されてしまったが、その時も身代金を要求された(という報道)。イスラム国に対して、彼は敵ではなく味方だと様々なメッセージを送ったが、それ(殺害)と思われる映像をネットに流されて命を絶たれた。これも日本国政府が責めれるべきではない。外務省の規約で、テロリストには資金供与をしないとあるし、後藤氏には何度も渡航の中止を申し入れたということだから。

それでも、最後までは政府として出来ることを最大限にする義務はある。

あれほどまでに、自ら「自己責任」を叫び、政府を批判していた安田氏には、今回起こった事を詳細に伝える義務があるし、救ってくれた人達全てに感謝の念を伝えることだけは責務だ。そうでないと、本当に彼は非難の的になってしまうだろう。

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佐藤尊徳

株式会社損得舎
代表取締役社長/「政経電論」編集長

佐藤尊徳さとうそんとく

1967年11月26日生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部卒。1991年、経済界入社。創業者・佐藤正忠氏の随行秘書を務め、人脈の作り方を学びネットワークを広げる。雑誌「経済界」の編集長も務める。2013年、22年間勤めた経済界を退職し、株式会社損得舎を設立、電子雑誌「政経電論」を立ち上げ、現在に至る。著書に『やりぬく思考法 日本を変える情熱リーダー9人の”信念の貫き方”』(双葉社)。
Twitter:@SonsonSugar
ブログ:https://seikeidenron.jp/blog/sontokublog/

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