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日銀の国債買い入れにちぎんのこくさいかいいれ 国債買入オペ

物価上昇は実現されず債務残高はGDPの2倍超に

日銀は2013年4月の「異次元金融緩和」以降、大量の国債購入に乗り出している。俗に“バズーカ砲”と呼ばれる大胆な金融緩和策で、購入額は順次拡大され、20年4月まで「年間約80兆円」が購入のメドとされた。狙いは、2%の物価上昇を実現すること(デフレに逆戻りさせないこと)であった。

中央銀行が政府から国債を直接購入することは財政ファイナンスといわれ日本では財政法で禁止されているので、日銀は民間金融機関から国債を買い上げる。民間金融機関は日銀が買い上げてくれること見越して、日本政府が発行する国債を購入する。日銀が民間銀行から大量の国債を購入することで、その代金となるマネーが民間銀行を通して市中に出回り、景気を刺激する。いわゆる「金回りをよくする」というわけだ。

2016年9月からは「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」も導入され、長期金利もゼロ近辺に誘導されている。

しかし、日銀による国債の大量購入は副作用も伴う。平易にいえば、「日銀が大量に国債を購入してくれるのだから、国債を大量に発行しても大丈夫だ。しかも、超低金利で発行できる」と、放漫財政を呼び込みかねないリスクがあること。

さらに、超低金利により銀行の利ザヤが大幅に縮小し、収益を圧迫。結果として銀行を通じた貸出(信用創造※)が収縮するジレンマを抱えている。日銀による大量の国債買い入れは“劇薬”ゆえに、短期間で終了させるべき施策だった。

※信用創造=預金を基に別の貸し出しを行うことによって最初の預金額より多くの預金をつくりだすこと。経済活動の円滑化に貢献する。

しかし、2%の物価目標はいまなお実現されないばかりか、新型コロナウィルス感染拡大を受け、2020年4月27日の金融政策決定会合では、「年間約80兆円」とされた買い入れ枠が撤廃され、「(買い入れ)上限を設けず、必要に応じて買い入れる」ことが決まった。青天井となった日銀の国債買い入れに、市場では事実上の財政ファイナンスに踏み込んだとの見方もある。

問題はこの劇薬をいつまで続けられるか、持続性が問われる。日本政府の債務残高は国内総生産(GDP)の2.4倍と、第2次世界大戦後のイギリスに次ぐ歴史的な水準に膨らんでいる。日銀の国債買い入れがそれを支えている構図だが、いずれ限界も訪れよう。日銀は買い入れた国債を満期まで保有し続けるしか、出口はないだろう。

 2020.8.18更新

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